農薬まみれのコットン畑で働くシャンティさん(インド)
綿花を一つ一つ受粉させていく作業
インドは世界一のコットンの耕地面積を持ち、中国に次ぐ世界二位のコットン生産量を誇ります。そんなインドでは、コットンを作って売る農家だけでなく、コットンの“種子”を栽培している農家があります。種子作り目的にした畑だけでも、40万人以上の子どもが働いているといわれ、その70~80%が女の子です。
シャンティさん(仮名/12歳)とは、2009年8月に出会いました。インド南部のアンドラ・プラデシュ州のある村で農家に雇われ、コットンの種を作る畑で働いています。5歳から働き、学校へは一度も行ったことがありませんでした。朝は6時に起き、水くみ、掃除をして8時頃に朝食を食べて、畑まで約2キロ歩いていきます。
シャンティさん
彼女の仕事は、綿花を手作業で受粉させる作業です。まず、花から花弁をとり、めしべをむき出しにし、赤いセロファン紙をつけます。むき出しにしためしべにおしべをこすりつけて受粉させていきます。受粉させたら赤いセロファンを取り、受粉させたかどうかを分かるようにします。この作業は、毎年6月~9月頃に集中的に行われます。この時期いっせいに農家は人を雇い、毎日この作業を続けます。シャンティさんは2ヶ月間、休みが一日もありませんでした。
なぜコットン畑で多くの女の子が働いているのか
強い日差しの中、作業を続ける女の子たち
コットン畑はほとんど日陰もなく、強い日差しの中、常に腰をかがめて作業します。畑には農薬がまかれ、防具もつけずに作業をするためとても危険です。シャンティさんは農薬を吸って頭痛や腹痛がしたり、農薬が肌について皮膚病になったり、病院へ何度も通いました。大人が働く場合は1日100ルピー(約270円)ですが、シャンティさんは1日70ルピー(約189円)しかもらっていません。
コットン畑で女の子がたくさん働く背景には、女の子に対する教育の考え方もあります。インドのこの地域には、結婚持参金(ダウリー)という習慣があり、親が女の子への教育をためらうのです。
結婚持参金は、結婚時にお嫁さんの家が用意するもので、教育を受けた女の子は持参金の額が高くなります。この結婚持参金を用意するために、子どもを数ヶ月間毎日コットン畑で働かせる契約をするのです。契約すると前金として3,000ルピーのお金をもらえますが、働いて返済しなくてはならない借金です。それでも、家族の年収一年分に相当する大金が一度に手に入るので、親は子どもを働きに出してしまうのです。
農薬まみれのコットン畑
農薬で皮膚病にかかったシャンティさんの腕
農薬がまかれたコットン畑で防具もつけずに働いていることが原因で、シャンティさんは皮膚病と貧血になってしまいました。医者からはもう働かないように言われていますが、お父さんいわく「他に選択肢がない」そうです。
シャンティさんのような子どもと家庭をどのように支援していけるか、とても難しい課題です。その後の調査で、シャンティさんは農薬の影響による血液癌が原因で、2011年に帰らぬ人になっていたことが発覚しました。近くの病院をいくつか回りましたが治療ができず、約220km離れた大都市ハイデラバードの病院に入院しましたが3日目になくなったそうです。短すぎる15歳の命。もう少し何とかできなかったのか、考えてしまいます。
児童労働は子どもの命に関る問題です。しかし、国も、地域も、家族も、子どもの健康や教育の優先順位を高められず、「貧しいのだから仕方がない」とあきらめ、子どもたちの貴重な命、可能性がないがしろにされています。
世界には、この瞬間にも1億6800万人の子どもたちが働いています(国際労働機関:2013年発表推計)。一人でも多くの子どもたちが可能性を花開かせられるよう、児童労働をなくす運動を、もっともっと盛り上げて行きたいと思います。
1,000円で子ども1人の給食1カ月分を支援できます
シャンティさんのような子どもたちを危険で有害な児童労働から守り、教育を受けられるよう、ACEはインドのコットン生産地域で「ピース・インド プロジェクト」を行っています。インドのコットン生産地域で児童労働をなくし、村人たちが持続的に村の課題に取り組むための環境を作るため、ぜひ「コットン募金」へのご協力をお願いします!
インドのコットン生産地域の子どもたちを支援「コットン募金」
みなさんからお寄せいただいた「コットン募金」は、子どもたちを危険な労働から守るための活動に活用させていただきます。クレジットカードがあれば、インターネットからいますぐ寄付ができます。
世界の子どもの笑顔のため、世界を変える小さな一歩を。
- カテゴリー:子どものエピソード
- 投稿日:2010.08.12