コットンのやさしい気持ち

コットン生産地での支援開始のきっかけになったヴィジェラクシュミちゃん(インド)

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2009年1月に会った時のヴィジェラクシュミちゃんヴィジェラクシュミちゃん(仮名)と初めて会ったのは、ピース・インド プロジェクトを始める前の2009年のことでした。当時13歳(小学6年生)だったヴィジェラクシュミちゃんは体調が悪く、学校を休んで寝込んでいました。8歳から5年間、ときどき学校に通っていましたが、ほとんどの時間をコットン畑での仕事に費やしていました。

コットン畑で使われる農薬の影響で、その頃から体調を崩して病院に通うようになっていました。ヴィジェラクシュミちゃんは6人家族で、両親と姉1人、弟2人と暮らしていました。土地がないため親は仕事がなく、子どもたちは学校へ通えなかったり、中途退学したりしていました。

(写真は2009年1月に会った時のヴィジェラクシュミちゃん)

コットン畑での仕事が子どもの健康に与える影響

よく「学校に通いながらであれば、子どもが仕事をしてもよい」と言われることもありますが、たとえ学校へ通っていたとしても、子どもの健康に悪影響を与える労働は「児童労働」に当たります。

2008年、WHO(世界保健機関)の報告によると、インドのコットン栽培では、農薬による健康被害が各地で多くみられ、吐き気、皮膚炎、頭痛、震え、筋肉の痙攣(けいれん)、呼吸障害、精神障害、視覚障害、認識力・集中力の低下などの症状が確認されています。中には、死に至るケースも報告されています。ACEが支援する村や近隣の村でも、コットン畑で働いていた子どもが亡くなるケースも少なくありません。

ヴィジェラクシュミちゃんのように体調不良を訴える子どもが何人もいたため、この村からピース・インド プロジェクトを始めることにしました。

親が収入を得られるよう支援を受けて高校まで進学

2010年からヴィジェラクシュミちゃんの住む村での支援活動が始まると、現地スタッフは何度も家庭訪問して、家庭の状況や子どもの教育について親と話し合ってきました。話し合いの結果、親が定期的に収入を得られるよう羊やヤギを支給して畜産ビジネスができるよう支援を始めました。おかげで、家族の収入は安定し、ヴィジェラクシュミちゃんは働かなくてすむようになり、学校へ通い続けるようになりました。今では、となりの村にある高校に進学して高校3年生まで勉強することができました。

技術を身につけて自分で仕事ができるようになりたい

2014年4月、職業訓練センターにて。自分で刺繍したトートバックを見せてくれるヴィジェラクシュミちゃんヴィジェラクシュミちゃんは、2013年からはプロジェクトで運営する職業訓練センターに通いはじめ、自分で服を作れるようになりました。自分で刺繍したバッグも見せてくれました。

(写真は2014年4月、職業訓練センターにて)

※ヴィジェラクシュミちゃんが刺繍してくれたトートバッグは、2014年5月10日に開催した「エシカルファッションカレッジ」の「オリジナルトートバッグづくりワークショップ」でお披露目されました。

インドの女の子が刺繍したトートバッグを製作

「大学には入れないけど、何か技術を身につけて自分で仕事ができるようになりたい。今は元気になったし、刺繍を学べてすごく楽しいです。両親も家畜の仕事ができて生活がだいぶ楽になりました。私が訓練センターに来るのも賛成して、喜んでくれています」と話してくれました。

ヴィジェラクシュミちゃんのように、コットン畑で働いていた状況から抜け出し、新たな人生を歩みだした子どもたちが増えました。その明るい姿を見て、親や住民たちもとても喜んでいます。

働いていた子どもたちがイキイキと学べるように

プロジェクトをはじめるきっかけとなったヴィジェラクシュミちゃんと、2014年4月に再会することできました。ヴィジェラクシュミちゃんは18歳になっており、見違えるように元気になった姿を見れたことが何よりもうれしいです。さらに職業訓練センターにも通い、今後の生活のため前向きに技術を学ぶ姿はまぶしく、たくましくも感じました。

ACEの支援活動は、手探りで住民の声からヒントを得て、さまざまな活動を行ってきました。子どもたちや親がそれぞれの活動に触れて、徐々に生活が良い方向に変わっていくのを現地スタッフと共に、日々実感しています。

報告:国際協力事業インド担当 成田 由香子

 

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メリちゃんのように、遊んだり、勉強したいと思いながらもそれが叶わず、おとなと同じように働いている子どもがいます。

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  • カテゴリー:子どものエピソード
  • 投稿日:2014.05.21