国連に対して子どもの権利主流化を求める声明に賛同しました
国連に対して子どもの権利主流化を求める声明に賛同しました
アントニオ・グテーレス事務総長が「私たちの共通の課題」という報告書を2021年9月10日に発表しました。その中で子どもについては、将来の世代として、また保健や教育の権利に関連付けてしか書かれていませんでした。Child Rights Connectというスイスの団体は、「子どもの権利の主流化~『私たちの共通の課題』に対して子どもの権利に関する国連全体の戦略を求める」という声明を発表し、ACEも賛同しました。
国連事務総長の報告書「私たちの共通の課題」
世界は、新型コロナウイルス感染症、紛争、気候変動に伴う壊滅的な影響や貧困、差別、暴力、排斥によって、ベーシックニーズへの権利が否定されている状況に直面しています。これらの課題には多国間協調と国連がその中心となることを通じて対応可能であるという認識から、国連創設75周年となる2020年に、加盟国は事務総長に対して、世界共通の課題に取り組んでいくための提言をまとめた報告書の作成を要請しました。
これを受けて、2021年9月の国連総会において「私たちの共通の課題」が発表されました。この先25年を見据えて、国際協調の将来、そして包括的で、ネットワーク化され、効果的な多国間協調に関するアントニオ・グテーレス事務総長のビジョンが描かれています。
「私たちの共通の課題」は、「持続可能な開発目標(SDGs)」を含むこれまでの合意を加速化して実施するための行動アジェンダであるとしています。あらためて世界が連帯し共通の利益に向けて協力するための新しい方法を模索する時、政府と市民の間および社会における契約を再構築する時、長期的な視点で考え若者と将来の世代のためにより責務を果たしてこれからの課題により一層の準備をする時、などの提言を行っています。
国連において子どもの権利を主流化するように求める市民社会組織による声明
Child Rights Connectというスイスの団体が、「子どもの権利の主流化~『私たちの共通の課題』に対して子どもの権利に関する国連全体の戦略を求める」という声明を発表し、世界の団体に賛同を呼びかけました。2021年11月20日の時点で、ACEを含む100団体が賛同しました。
「私たちの共通の課題」そして2020年に国連事務総長から発表された「人権のための行動への呼びかけ」(Secretary-General’s Call to Action for Human Rights)では、子どもは現在の権利保持者としての記述はなく将来の世代として、そしてデジタル環境や保健と教育に関する権利や状況に関連して触れられているだけで、包括的な子どもの権利という視点が欠けていることを指摘しています。「私たちの共通の課題」を“child”で検索してみると、“child mortality,” “child labour,” “child marriage”という3か所しかありませんでした。
ACEが賛同した声明では、国連すべての機関と国連の3本柱(国際の平和と安全の維持、人権の擁護と推進、経済社会開発の推進)に適用される子どもの権利に関する戦略を策定するよう求めています。国連は、子どもの権利条約という子どもに特化した人権条約をもちながら、国連の政策の一貫性を担保するために子どもに特化した戦略がありません。子どもの権利に関する国連全体のアプローチが重要であり、加盟国の国家レベルでの行動を支援するために国連の能力強化も必要です。子どもの権利に関する国連戦略が子どもの権利アプローチが体系的、積極的に取られ、子どもの権利の主流化を担保するための最善の方法であると考えています。
その戦略とは、子どもの権利条約および子どもの権利委員会による「一般的意見5:子どもの権利条約の実施に関する一般的措置」に沿って、すべての国連機関が子どもの権利アプローチをそれぞれの任務に効果的に盛り込む方法について、実践的なガイダンスを提供するようなものにすべきです。また、戦略を効果的なものにするためには、子どもの権利アプローチを含む人権を基盤としたアプローチの適用に関して、国連システム全体の他の戦略や個々の機関の経験から得られた教訓に基づいたものにすべきです。
声明(英)はこちら→
Position_Paper_Our_Common_Agenda_CRCNCT_2021Sep
声明(ACE日本語訳)はこちら→
声明「『私たちの共通の課題』に対して子どもの権利の主流化を求める」20211120(ACE訳)
グテーレス国連事務総長からの回答
私たちが声明を発表してからわずか1か月後に、グテーレス国連事務総長は国連全体における子どもの権利アプローチがないことに対して対応を開始しました。Child Rights Connect代表宛てにターク国連事務次長補・戦略調整担当次長から書面が届きました。その内容は、「世界レベル、地域レベル、国レベルの国連システム全体で包括的な子どもの権利の視点を強化する必要性に同意し、事務総長による「人権のための行動への呼びかけ」の枠組みの中で子どもの権利主流化に関するガイダンスノートを作成する予定である」となっています。
Child Rights Connectは、このガイダンスノート作成にあたって、世界の市民社会組織や子どもたちがかかわれるように重ねて要請しました。
国連では、子どもの権利条約がありながら子どもの権利の視点を国連のすべての活動に取り入れるための戦略がない状況ですが、私たちの働きかけによってガイダンスノートが作成されるという進展が期待されます。一方、子どもの権利条約を批准している日本では、子どもの権利委員会から「子どもの権利に関する包括的な法律」をつくるように何回も強く勧告されているにもかかわらず、また市民社会組織から日本政府に対して法律の制定を長年にわたって要請しているにもかかわらず、いまだに実現していない状況です。ACEは国内でも、子どもの権利条約を基盤とした総合的な法律が一日も早く制定されるように「広げよう!子どもの権利条約キャンペーン」の事務局として活動しています。
日本そして世界の子どもたちのために、国内外でアドボカシー活動をがんばっていきます。これからも、皆様のご支援・ご協力をよろしくお願いします。
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2021.12.08