G7倉敷労働雇用大臣会合でACEがスピーチ!

G7倉敷労働雇用大臣会合でACEがスピーチ!

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G7広島サミットは首脳会議だけでなく、全国各地でさまざまなテーマによる閣僚会合も開催されています。ACEは、市民社会(Civil 7)の代表として、倉敷で行われた労働雇用大臣会合(2023年4月22~23日)でスピーチをしました。

写真提供:厚生労働省

 

ACEにとって児童労働撤廃について各国政府のコミットメントを強めることは、重要なテーマです。なぜなら、ひとつのNGOがリーチできる子どもの数は、とても限られているからです。一方、児童労働の問題が深刻な政府とG7各国が協力しながら、貿易やサプライチェーンに関する政策や国際協力を通じて、児童労働への積極的な取り組みを促進できれば、私たちのプロジェクトでもたらす数十倍、数百倍のインパクトをもたらす可能性があります。

児童労働ともっとも関連のある雇用労働大臣会合の宣言文に「児童労働」が入るか、どのように書かれるか、がそのあとの各国政府の政策にも影響してきます。そこで、ACEはG7やG20など政府の政策に影響を与える大きな国際会議の際に、政策提言活動を行っています。

C(Civil)7 2023での活動

G7(主要7カ国首脳会議)には、政策を提言する公式な「エンゲージメント・グループ」が8つあります。そのひとつがCivil 7(CivilはCivil Society=市民社会の略)で、今年もACEはメンバーとなり、2023年2月から活動を開始しました。C7に6つあるワーキンググループのうち「公正な経済への移行ワーキンググループ」に参加して、児童労働に関する提言をC7のコミュニケ(提言書)に入れてもらえるように発言しました。世界から市民社会組織の人たちが集まるオンライン会議ですので、時差を考えて夜の時間帯(21時位から)となります。そして、議論は英語で行われます。

4月に発表したC7のコミュニケには、「ビジネスと人権と労働」についての提言の中に、「児童労働をなくすために行動をとること」を入れることができました。

G7雇用作業部会に出席

労働雇用大臣会合の前には、厚生労働省をはじめとし各国の労働や雇用を扱う省庁の官僚の人たちを中心に作業部会や準備会合が行われ、宣言文の案を作ります。本番の労働雇用大臣会合で最終調整され、大臣によって宣言が採択される、というプロセスになっています。

2023年2月に行われた第1回雇用作業部会には、エンゲージメント・グループも招待され、C7からACEの太田を含む2名が出席しました。政策提言の発表に与えられた時間は7分。すべてのILO中核的労働基準を批准するように促進、児童労働撤廃のための国家行動計画の作成、途上国の労働基準監督強化のための国際協力、など9項目を提言しました。このC7の提言は、ワーキンググループ「公正な経済への移行」のメンバーと話し合って、検討したものです。

雇用作業部会に出席していた官僚の人たちの中には、2019年に日本がG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)をホストした機会に、ACEが開催したSDG 8.7ダイアログ(*)に参加してくださった人もいました。ACEのことを覚えてくださっていて、発表の後「ACEの活動に感謝します」とコメントいただきました!

(*)ACEが開催したSDGs 8.7ダイアログの報告ページはこちら:
G20大阪 首脳宣言に「児童労働撤廃」が盛り込まれました(2019年7月)
G20 労働雇用大臣宣言にも「児童労働撤廃」が盛り込まれました(2019年9月)

G7倉敷雇用労働大臣会合でスピーチ

2023年4月22~23日に、岡山県倉敷市で労働雇用大臣会合が開催されました。C7にも招待があり、ACE代表の岩附が出席しました。

1日目、加藤勝信厚生労働大臣などの開会のあいさつのすぐ後が、エンゲージメント・グループからのスピーチで、C7のコミュニケで提言している内容を中心に話しました。

・広島サミットは、「トリプルA(AAA)」の評価を得る――即ち、野心(Ambition)を高く持ち、行動(Action)を起こし、説明責任(Accountability)を果たす――ことによって、世界の政治・経済大国の特権に付随する責任を履行していると示すべきなのです。」
・児童労働撤廃のための国家行動計画をつくってください
・企業に人権デュー・デリジェンスを促す法律を作り義務化してください など

また、雇用の差別、強制労働、セーフティーネットなど、雇用にまつわることにも述べました。

しかし、雇用労働大臣会合の直前に作業部会が開かれていて、宣言文はほぼ出来上がっているはずです。会合で提言したことが宣言文に反映されるチャンスは少ないのであれば、なるべく印象に残るスピーチを、と考えました、岡山県と言えば「桃太郎」。桃太郎が、誰もしたことがなかったことをいかにしてやり(Ambitious)、行動を起こし(Action-oriented)、宝物を村の人に返したか(Accountable)=トリプルA(AAA)、という構成に変えて話しました。

G7倉敷労働雇用大臣会合でスピーチする岩附(写真提供:厚生労働省)

 

現実世界では、鬼は桃太郎のストーリーほど見えやすく、明らかなものではありません。それでも、私たちは平和と繁栄、また尊厳、自由、平等を人びとが享受できるような透明性という宝物を取り戻すために闘わなくてはなりません。桃を食べるたびに桃太郎を思い出して、G7をトリプルA(AAA)にしてください、とスピーチを締めくくりました。

議長を務めていた加藤勝信厚生労働大臣は地元が岡山で、「桃太郎伝説に言及していただき、ありがとうございます」と受けていただき、他の出席者の方々からも、「いいスピーチだった」とお声がけをいただき、お役目を果たすことができました。

また、児童労働についてより詳しい政策提言を含め、労働雇用大臣会合に合わせて発表した、Civil 7(C7)とLabour(L7)による共同声明についても、手渡しさせていただいたり、C7とL7の発言でも触れ、周知を図りました。

人への投資~倉敷労働雇用大臣宣言

倉敷労働雇用大臣会合の最後に採択された宣言文では、児童労働撤廃を積極的に推進することが盛り込まれました。昨年のドイツでの労働雇用大臣会合の宣言文には、「児童労働」という語句が5回入っていて、輸入規制などを通して児童労働に取り組むなど、より具体的な内容であったことからすると、少し後退した感があります。

しかし、ACEがずっと日本政府に働きかけていた「アライアンス8.7」(Alliance 8.7=SDG 8.7達成のためのグローバルな枠組み)への参加については、進展がありました。宣言文に次の1文が入りました。
「我々は、また、アライアンス8.7を含むディーセント・ワークの推進への取組について、他国などにも広がるよう働きかけていく。」
「アライアンス8.7」が労働雇用大臣宣言に含まれたのは、初めてです。

その他、2月の雇用作業部会で提言した9つの項目のうち7つ、ILOの基本的な条約批准の尊重推進、ステークホルダーとの意義ある対話、デジタル化の過程で取り残されていく人への支援、多様な労働者(障がい者、女性など)への取り組み、すべての人に社会的保護を、グローバル・サプライチェーンに関する法律・規制などの導入、労働基準監督への支援については、盛り込まれました。モニタリングと評価については、職業能力開発・生涯学習政策やプログラムなど一部の事業に限定して言及があり、児童労働撤廃のための国家行動計画は入りませんでした。

予想していた通り、第1回目の雇用作業部会に出席させてもらい、政策提言できたことで、多少なりとも市民社会が求めることが宣言文に反映されたと言えると思います。

G7広島首脳コミュニケ(首脳宣言)

倉敷労働雇用大臣会合の約1か月後、2023年5月19~21日に開催されたG7広島サミット首脳宣言においても、「児童労働撤廃」へのコミットメントが再確認されました。2021年のイギリス、2022年のドイツでのG7首脳宣言に続いて、3年連続で盛り込まれました。

しかし、ドイツでの首脳宣言ではグローバル・サプライチェーンにおける児童労働や児童労働の根本的要因へ取り組むことが明記されていましたが、広島での首脳宣言ではおおよそ上記の労働雇用大臣宣言を踏襲したもので、児童労働について書かれている分量が減り、内容的にも薄いものでした。

 

写真提供:厚生労働省

 

2日間の雇用労働大臣会合では、会議の他にも倉敷市美術館でのレセプション、倉敷中央病院視察、美観地区での集合写真などもあり、倉敷の美しい街並みや地元の人たちのあたたかいおもてなしに触れることができました。

なにより、G7各国の労働雇用に関する政治のトップにいる人たちから情報を得ることができ、各国の官僚やILOなど国際機関の人たちと関係性を新たに構築、そして再構築できました。

この経験は、これからのACEのアドボカシー活動に生かしていきたいと思います。
引き続き、みなさまのご支援・ご協力をよろしくお願いします!

         

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  • カテゴリー:報告
  • 投稿日:2023.06.15