人身売買で連れてこられたエマヌエルくんとステファンくん(ガーナ)
学校にも通えず、一日中牛の放牧をしていた2人
気温30度を超える2010年1月のある日の午後、子ども2人が10頭ほどの牛を連れて歩いているところに通りかかりました。子どもたちに話を聞くと、炎天下の中、一日中歩き続けていたとのこと。お腹を空かせていました。子どもたちの体より何倍も大きい牛は、コントロールするのが難しく、襲われる危険性も高く、とても危険な労働です。
ガーナのアシャンティ州アングロ村で暮らすエマヌエルくん(11歳)とステファンくん(14歳)。ガーナ北部のアッパーイースト州の親元を離れ、カカオ生産と牧畜で生計を立てる小作農家の労働者として暮らしていました。雇い主の子どもは学校に通っていますが、2人は学校へ行くことが許されていません。
ガーナ北部からカカオの採れる南部へ人身売買で連れてこられる子どもたち
子どもを親元から引き離し、無理やり働かせるようなことは人身売買と呼ばれ、国際法でもガーナの法律でも禁止されています。このような子どもたちを見つけた場合、すぐに保護して身の安全を守る必要があります。しかし実際に保護するためには、違法行為を行っている雇い主を逮捕し、裁判にかけ、裁判所命令を取りつけるなどの司法手続きが必要となります。
2010年の1月以降、子どもを保護するタイミングを計ってきましたが、関係者の協力や手続きが思うように進まず、保護できない状況が続きました。現地出張の度にふたりを訪ね安全を確認していましたが、すぐに保護してあげられないことに無力感を感じることもありました。
人身売買から子どもたちを救う決意をした瞬間
炎天下の中、一日中牛の放牧をさせられていた2人
2010年5月下旬、状況を確かめるために2人を訪ねました。話を聞くと、雇い主はエマヌエルくんとステファンくんを学校に通わせることを親と口約束していたことがわかりました。子どもたちもその言葉を信じて、雇い主についてきましたが、一度も学校に行かせてもらえませんでした。一日中放牧をさせられ、水くみや家での食事の準備などを強要されたといいます。カカオの収穫時期には、木に登ってカカオの実を落とす作業もしていました。「言うことを聞かなかったらおまえたちに食べさせるゴハンはない」とも言われていたそうです。最後にエマヌエルくん(11歳)は言いました。
「もしできるなら、いますぐ、ここを抜けだしたい。」
その言葉が私たちの心を強く動かしました。私たちは休日にもかかわらず郡知事や社会福祉局、司法局、警察など行政に働きかけました。私たちの熱意に押されて協力が得られることになり、2人の子どもたちを救出することができました。
その後2人は、郡の社会福祉局の管理の元で生活しながら、医師の診断や心理カウンセリングを受けました。実は多数の病気がみつかり、病気を抱えた状態で過酷な労働をさせられていたことがわかりました。なぜもっと早く保護してあげられなかったのだろうと強く反省しました。
人身売買から子どもたちを保護するために必要なこと
人身売買の被害にあった2人を保護した直後の様子
子どもたちが病気の治療と並行し、司法手続きを進めながら、出身地の社会福祉局の協力を得て、家族の居場所を探しました。2人の故郷のアッパーイースト州とACEが活動しているアシャンティ州は遠く離れ、親を探すだけでも大変な作業でした。幸い家族をみつけることができ、無事に子どもたちは家族と再会することができました。家族も過酷な状況で働かされてたことを初めて知り、涙を流していたそうです。
スマイル・ガーナ プロジェクトでは、人身売買の被害にあっている子どもたちの保護と家族との再会にも力を入れて活動しています。ACEが支援する地域では、同じように人身売買によって連れてこられた子どもたちがまだ複数いることがわかっています。
子どもを保護して家族の元に帰すためには、子どもを保護している間の生活費や親を探し出して連絡をとるための活動費、子どもを親元に返す際の交通費、地元に戻って学校へ通うための教育支援や家族の自立のためのサポートなど、多くの労力と時間や費用がかかることがわかりました。
一日でも早く、そして1人でも多くの子どもたちが家族と一緒に安心して暮らせるよう、みなさんのサポートをどうぞよろしくお願いいたします。
1,000円で子ども1人の給食1カ月分を支援できます
ACEはガーナのカカオ生産地域で働く多くの子どもたちを児童労働から守ってきました。今もなお助けを必要としている子どもたちがいます。そんな子どもたちを守るため、スマイル・ガーナ プロジェクトの実施を支える「チョコ募金」へのご協力をお願いいたします!
ガーナのカカオ生産地域の子どもたちを支援「チョコ募金」
アフリカのガーナで子どもたちの生活改善と教育を支援する「スマイル・ガーナ プロジェクト」実施に使わせていただきます。「しあわせを運ぶ てんとう虫チョコ」の売り上げの一部もチョコ募金として、子どもたちに笑顔を届けます。
- カテゴリー:子どものエピソード
- 投稿日:2010.06.25