ノーベル平和賞受賞 カイラシュ・サティヤルティ氏について
ノーベル平和賞受賞 カイラシュ・サティヤルティ氏について
マララ・ユスフザイさんとカイラシュ・サティヤルティさん、お二人のノーベル平和賞受賞を心よりお祝い申し上げます。2014年のノーベル平和賞は、世界中から推薦された278の候補(231個人と47団体)から選ばれた、とても価値ある受賞で、「子どもの権利」を守る取り組みを世界的に加速させるきっかけとなってくれることを期待しています。
受賞が発表されてから、日本でもマララさんに関する報道やニュースが多々見られましたが、カイラシュさんに関する情報が少なかったため、ACEが知りうる情報をまとめさせていただきました。ACEにとってカイラシュさんは、立ち上げのきっかけとなった恩師であり、児童労働問題に取り組む先輩で、とても尊敬する人物です。
➡ 2016年5月にカイラシュさんが来日されました!詳しい内容はこちらから >>
カイラシュ・サティヤルティ氏(Kailash Satyarthi)
「児童労働に反対するグローバルマーチ」代表、「教育のためにグローバルキャンペーン(GCE)」代表理事。ユネスコEFAハイレベルグループメンバー。
1954年1月11日、インド・マディヤプラデシュ州ビディシャ生まれ。幼少期に学校の正門前で靴磨きをする親子と出会い、学校に通う自分との違いに疑問を抱いきはじめる。1980年、26歳で電気技師をやめ、子どもの強制労働や人身売買を撲滅するための団体「BBA/SACCS・南アジア奴隷解放連盟」を設立。児童労働や搾取に苦しむインドの子どもたちの救出に取り組んできた。保護した子どもの社会復帰に向けた教育プログラムや施設も整備した。BBAがこれまでに救出した子どもは8万人以上。
児童労働根絶に向けた世界的なネットワーク作りにも尽力し、織物業界で、カーペットなどの製品が児童労働によって作られていないことを認定する国際非営利団体「グッド・ウィーブ」を設立。1998年には、世界110カ国の2,000以上のNGOや組合が参加して、世界中を練り歩く「児童労働に反対するグローバルマーチ」を発起。その後、「児童労働に反対するグローバルマーチ」は世界中の児童労働に関わる団体、組織をつないで様々な活動を行う国際的ネットワーク組織「Global March Against Child Labour」となり、代表を務める。
「ロバート・ケネディ人権賞(アメリカ1995年)」、「金旗賞(オランダ1998年)」、「F・エバート財団国際人権賞(ドイツ1999年)」、「ラウル・ワレンベルク人権賞(アメリカ2002年)」など多数受賞。2007年のアメリカ国務省の報告書では「現代の奴隷制を終わらせるために活動する英雄」と称賛された。2006年にもノーベル平和賞に推薦され、最終選考に残った。
公式プロフィール(英語)「Global March Against Child Labour」
カイラシュ氏(Kailash Satyarthi)の日本語表記について
ACEでは「カイラシュ・サティヤルティ」と表記。
他、サティアルティ、サティヤティ、サトヤルティと表記されることもある。
カイラシュさんが取り組む「児童労働」の問題
いま、教育の機会を奪われ、健全な成長を妨げる児童労働をしている子どもたちは、世界で1億6800万人以上いると言われています。(※国際労働機関(ILO)2013年発表推計)
児童労働は、アジア太平洋地域が最も多く、アフリカ地域が子どもに占める割合が5~17歳人口の21.4%、5人に1人と最も高くなっています。産業別に見ると、農業分野が最も高く、約6割を占めます。ACEは、児童労働がもっとも多いアジアのインドと、働く子どもの割合が高いアフリカのガーナで、農業分野に焦点をあてて子どもたちを児童労働から守るために活動しています。
カイラシュさんとACEとのつながり
「児童労働に反対するグローバルマーチ」
ACEは、カイラシュさんがはじめた「児童労働に反対するグローバルマーチ」を日本で開催するため、1997年に学生5人で立ち上がった国際協力NGOです。当時ムーブメントであった「児童労働に反対するグローバルマーチ」はその後、国際ネットワークNGOとして世界中の児童労働に関わる団体や組織をつないで様々な活動を行ってきました。ACEはグローバルマーチにおける日本のナショナルコーディネーターとして登録されており、1998年に日本でのグローバルマーチを実現し、以降もパートナーとして活動を共にしてきました。
インドの子ども支援「子どもにやさしい村」プロジェクト
ACEは2003年からカイラシュさんが設立したBBA(バチパンバチャオアンドーラン:ヒンディー語で「子ども時代を救う運動」)とパートナーシップを結び、農村地域で子どもたちを児童労働から守り、学校で質の良い教育を受けられるよう支援する「子どもにやさしい村」プロジェクトを実施してきました。
書籍『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。』
2007年にACEが執筆・出版された『わたし8歳、カカオ畑で働きつづけて。(合同出版2007年)』の冒頭には、出版に対するカイラシュさんのお祝いメッセージが掲載されています。
サッカーボール縫いの児童労働を訴えるため2001年に来日
カイラシュさんは、2001年、インドでサッカーボール縫いをしていた元児童労働者の女の子を連れ、来日しました。翌2002年に、アジアで初めてサッカーワールドカップ日韓大会が開催されるのに合わせ、インドとパキスタン、南アジアのサッカーボール産業における児童労働の問題について呼びかけるため、日本で記者会見が行われました。
この記者会見は、カイラシュさんが代表を務める「児童労働に反対するグローバルマーチ」が主導するキャンペーンの一環で実施されました。この記者会見をきっかけに、ACEとフリー・ザ・チルドレン・ジャパン、日韓アジア基金の3団体で「ワールドカップキャンペーン~世界から児童労働をキックアウト~」を展開し、日本で児童労働問題が知らえるひとつのきっかけとなりました。
2005年に元児童労働者を連れて来日
カイラシュさんは2005年、ACEのNPO法人設立記念シンポジウムに登壇するために来日しました。元児童労働者のインドの男の子と共に来日し、子どもたちを児童労働から救う原動力になっていることについて話してくれました。(2005年12月4日 東京・メトロポリタンプラザ)
2006年にも児童労働反対を呼びかけに来日
翌年の2006年6月、国際労働機関(ILO)が定めた「児童労働反対世界デー(6/12)」に合わせて再び来日しました。「児童労働反対世界デー・キャンペーン(現在は「ストップ!児童労働キャンペーン」)」の賛同イベントやシンポジウム、渋谷から表参道まで児童労働の撤廃を呼びかけるマーチなどに参加されました。
「経済のグローバル化と児童労働と企業のCSR」に登壇(2006年6月8日)
「僕たちも学びたい~貧困と闘う子ども労働者たち」上映イベント(2006年6月11日)
カイラシュ・サティヤルティさんに関する取材、
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2014年 ノーベル平和賞受賞されたマララさんとカイラシュさん
マララさんとカイラシュさんには、南アジアで子どもの権利のために立ちあがり、困難に負けず、今も行動し続けているという共通点があります。南アジアは、貧困や女子差別、児童労働の問題が深刻な地域です。マララさんはイスラム武装勢力の圧力に負けず勇気を持って発言し、凶弾に打たれてもなお女子教育のため力強いメッセージを発信しつづけています。カイラシュさんは、誰も児童労働に見向きもしなかった頃から、自らインドの子どもたちを救出し、市民や政治家、多くのNGOを巻きこんだムーブメントを起こしてきました。
あきらめないこと。人を動かすこと。女子教育の実現や児童労働の撤廃ができると信じること。お二人の行動は、多くの人を勇気づけ、行動に駆り立ててきました。私たちもその一人です。カイラシュさんが「児童労働に反対するグローバルマーチ」をはじめていなかったら、ACEは存在せず、ACEが救ってきた1,000人以上の子どもたちの生活は、今も苦しいままだったでしょう。
2008年インド・ニューデリーにて、カイラシュ・サティヤルティさん(右)とACE事務局長 白木朋子
二人のノーベル平和賞受賞者とともに
マララさんとカイラシュさんのノーベル平和賞受賞を機に、児童労働に対する関心が高まり、問題解決に向けた取り組みがよりいっそう進むことを期待しています。
そして、児童労働の撤廃と予防に市民と共に取り組んでいるACEの活動は、みなさんの応援とご支援で成り立っています。マララさんとカイラシュさんのノーベル平和賞受賞のニュースを聞いて、「自分も何かしたい」、「自分にも何かできるのでは」と思われましたら、ぜひACEの活動へのご支援もお願いいたします。
ACEが活動しているインドとガーナでは、今なお多くの子どもたちが児童労働に従事しています。その子どもたちを支援するために必要な資金が、まだ充分に集まっていません。
あなたの共感を、ぜひ行動に移してください。カイラシュさん、マララさんが目指している社会を、わたしたちと一緒に目指して下さい。どうぞよろしくお願いします。
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- カテゴリー:お知らせ
- 投稿日:2014.10.11