【ガーナ便り】「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン設立のためのガイドライン文書」が、ついに発効となりました!
みなさん、こんにちは。ACE事務局長の白木朋子です。いつもACEの活動への温かいご支援をいただき、ありがとうございます。世界中が新型コロナウィルスの拡大により大きな影響を受けており、多くの方々が不安な毎日を過ごされていると思います。まだまだ先の見通しが立たない状況が続いていますが、そんな中、ひとつうれしいニュースがあります。
去る2020年3月9日にガーナにて、「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン設立のための手順およびガイドライン文書(以下、CLFZガイドライン文書)」の発効を宣言する会合が盛大に開催されました。
場所は、ACEが「スマイル・ガーナ プロジェクト」を実施し完了した村です。ガーナ第二の都市クマシから車で4時間という遠隔地ですが、当日は、雇用労働大臣をはじめとする雇用労働省および児童労働ユニット関係者、教育省、ココボード(カカオの政府機関)などの中央政府関係者、郡の行政関係者、周辺の村の伝統的首長や住民、児童生徒を含む100名以上が集まりました。日本の関係者としては、JICAガーナ事務所からも2名の方に参加していただきました。
本来であればACEのガーナ担当の近藤と私も、この取り組みをご支援いただいた企業のみなさんと一緒に、日本からこの会合に参加する予定だったのですが、2月28日に発表されたガーナ保健省の通達により、コロナウィルス感染国からの渡航者についてガーナ国内での移動が制限されることになったため、日本からの渡航を断念せざるをえない状況となってしまいました(3月17日以降現在は、200名以上の感染者が出ている国(日本を含む)からのガーナへの入国が原則禁止されています)。
2018年11月から、ガーナの雇用労働省(MELR)や国際労働機関(ILO)、ガーナ農業労働者組合(GAWU)、ACEの現地パートナー団体であるCRADAなどの関係者との協働で進めてきた新たな制度づくりが、約1年半弱の年月をかけて、ようやくここに完結しました。
今回発効したガイドライン文書には「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン(児童労働のない地域、以下CLFZ)」の定義や、CLFZとして満たすべき郡レベルとコミュニティレベルの条件、CLFZ認定のための審査方法や指標、制度運用のための政府・行政機関やNGO、メディア等を含む幅広い関係者の役割などが定められています。今後ガーナ国内で児童労働に関わる取り組みを行うすべての関係者は、このガイドラインを参照することが求められることになります。
ガーナの児童労働撤廃において重要な位置づけとなる新たな制度が完成し、そのスタートを祝う歴史的な瞬間に立ち会うことができなかったことは大変残念なことでした。しかし、現地政府やこれまで制度づくりに関わってきた多くの関係者の努力により、これまでの成果が実り、ガーナが児童労働のない国へ向かってさらに前進し続けるための、新たな一歩を踏みだすことができました。
ACEとしてもこの取り組みに深く関与し、ここまでたどり着くことができたのも、日頃からご支援いただいているみなさま、とりわけ、今回の制度づくりにおいて財政面、専門性の面からサポートしていただいた、デロイト トーマツ コンサルティング合同会社さまのおかげです。心より感謝申し上げます。ありがとうございます。
3月9日に行われた会合について、ガーナから詳しいレポートが届きましたので、以下ご報告いたします。
2020年3月9日、ガーナにおける「チャイルドレイバー・フリー・ゾーン設立のための手順およびガイドライン文書(以下、CLFZガイドライン文書)」の発効を宣言する会合がガーナにおけるカカオ生産の中心地のひとつである、アシャンティ州アチュマ・ンプニュア郡の村でおこなわれました。
本会合では、この地域の児童労働モニタリングチーム(CLMT)のメンバーによる開会宣言に始まり、雇用労働省の担当の職員による、今回のCLFZガイドライン文書の制作の背景や、ガイドライン文書に定められているCLFZの定義や審査方法の概要について説明が行われました。
次に、雇用労働省のガイドライン政策担当者が、今回のCLFZガイドライン文書の制作が、ガーナの児童労働撤廃に向けた国家行動計画フェーズ2(NPA2)の元で進められてきた背景や、ガイドライン文書に定められているCLFZの定義や審査方法の概要について説明しました。
また今回はJICAガーナ事務所からのスピーチがあり、ガーナからカカオを多く輸入する日本の立場から、JICAとしてもガーナ政府と連携しながら、CLFZガイドライン文書が効果的なツールとして活用され、児童労働撤廃に向けた取り組みが進むよう協力していきたいとの思いが語られました。また、今回の制度づくりに深く関与してきた、デロイト(日本)とACEからのメッセージが代読され、ココボードやアチュマ・ンプニュア郡知事からも、連帯を示すメッセージが伝えられました。
さらには、カカオ生産における児童労働から抜け出し、今は大学の教育学部に通っているゴッドフレッド君からのスピーチがありました。9歳で父親を亡くし児童労働を余儀なくされた後、「スマイル・ガーナ プロジェクト」を通じて学校に通い直した彼は、子ども権利クラブの中心メンバーとして活動した経験や、中学校卒業時の全国共通試験(BECE)で、郡で一番の成績を修めて高校に進学したことなどについて語りました。また政府や関係機関が協力して支援活動のすそ野を広げ、厳しい状況にある子どもたちの夢の実現を後押しすることを要望しました。
イベントが行われた村の村長のメッセージでは、この村を含む8村が「スマイル・ガーナ プロジェクト」を通じて児童労働のない地域づくりも取り組んできた経験が語られました。プロジェクトの前は60%未満だった村の小学校の就学率が98%にまで向上したことや、学校のインフラ改善が進み小中学校の義務教育を終了する子どもが増えたこと、カカオ農家が技術を高め生活の質が改善したこと、村の子ども保護委員会の設立や村の条例制定が取り組みにおいて重要な要素であったことなどについて語り、これからも関係者との協働で努力を続けていくことを強く誓いました。
最後に、イグナチウス・バフォー・アウア雇用労働大臣がスピーチを行い、CLFZガイドライン文書の発効を宣言しました。村の住民の参加者の多くが英語を理解しないことを認識した大臣は、急遽現地語(チュイ語)でスピーチを行い、ガーナの経済を支えているカカオ農家に対して直接、感謝と労いの言葉をかけました。同時に、米国の大学による調査でガーナとコートジボワールにおけるカカオの児童労働の現状が指摘されていることを受け、児童労働を文化的な習慣として続けていると、ガーナのカカオが児童労働に関与しているものとして国際市場で取引されなくなってしまう恐れがあるとの警鐘を鳴らし、児童労働に真剣に取り組む必要性を、熱意をもって訴えました。スピーチの中では、ACEとCRADAの現場での活動や、デロイトの支援に対する感謝も述べられました。
議長による閉会宣言の後には、雇用労働大臣など来賓によるカカオの植樹が行われ、この記念すべき会合が成功裡に終了しました。会場には、ガーナと日本の国旗が飾り付けられ、両国のパートナーシップの強さを示していました。
写真提供:CRADA、ガーナ雇用労働省
本件に関連した活動報告はこちら:
2020.01.30【ガーナ便り】発効に向けた、最後の全国会議を開催!チャイルドレイバー・フリー・ゾーン認定制度、いよいよ大詰めです!
2019.08.08【ガーナ便り】児童労働フリーゾーン実現に向けてのガーナ政府との取組み
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- カテゴリー:児童労働ニュース
- 投稿日:2020.04.09