【ガーナ便り】雨不足で干乾びたカカオ、農家の収入が減少しています
みなさん、こんにちは!いつもACEの活動への温かいご支援をいただき、ありがとうございます。ガーナ担当スタッフの赤堀友希です。先月(2022年2月)中旬から約3週間、ガーナへ行ってきましたので、その様子も含めてガーナのカカオ農園の様子、カカオ農家さんの雇用形態についてお伝えさせていただければと思います。今回の渡航は、ACEの「スマイル・ガーナ プロジェクト」としてではなく、ガーナの児童労働についてのJICA(国際協力機構)の調査としての渡航でした。
(参考)ガーナの児童労働についてのJICAの調査プロジェクトを受託、CLFZ制度推進に新たな一歩
雨不足のため干乾びてしまったカカオ
今回は新型コロナウィルスの感染拡大が始まってから3回目の渡航でしたが、ガーナでは国際空港に到着後のPCR検査が陰性であれば自主隔離をする必要がなくなり、現地で活動にあてる日数を確保しやすくなりました。もちろん、感染対策は徹底して活動してきました!
調査では度々、ガーナ南部のカカオ生産地域の村々を訪問するのですが、生産地域に近づくにつれて、道の両脇にカカオの木々がずらっと並ぶ風景に変わっていきます。ただ、今回は特に、葉が茶色くなったカカオの木が多いことに気付きました。
現在、ガーナのカカオ生産地域では、気候変動の影響からか2年程前から降水量が少なくなっています。カカオの木は気候の変化に敏感で、例えば雨季以外の時期に多く雨が降ったり、乾季が通常より長く続いたりすると、木は弱ってしまい、収穫量が減少する原因になります。
スマイル・ガーナ プロジェクトの支援地からは、「2022年2月時点でカカオの収穫量が通常の年と比べて半分になってしまった、ここ2年間でこのような状態が続いている、カカオ農園でひどい所では若い木が枯れてしまった一帯がある」との報告がありました。(これは、若い木は特に乾燥に弱いことと、この一帯の土の栄養が不足していたためとみられます。)
今回調査で訪れた多くの村のカカオ農園でも、降水量の不足が原因でカカオの葉が茶色く変色しているものが所々ありました。カカオの実はというと、木に成ったまま、さやは干乾びて黒く変色しており、二つに割ると、種子(発酵・乾燥させてチョコレートの素になる部分)もカラカラに乾いてしまっていました。干乾びた種子もカカオクリームやカカオソープの原料となるので売ることはできるのでが、通常のカカオの買い取り額と比べて3割程の値段しか付きません。
コロナ禍で青空市場が一時的に閉鎖になり多くの農家さんの副収入が減少しましたが、主な収入源となるはずのカカオからの収入も減少が続いているという、二重の苦しさがあります。
不安定な条件で働くカカオ農家の支援を行っています
3種類のカカオ農家
さて、収穫量が減少し続けているカカオですが、このような状況の中で一番影響を受けるのが、カカオ農家の中でもケア・テイカー(care taker)と呼ばれている農家さんたちです。カカオ農家は3種類に分けることができ、1つ目に土地持ち農家、2つ目にシェア・クロッパー(share cropper)、3つ目にケア・テイカーです。
土地持ち農家
1つ目の土地持ち農家は、一族から相続された土地、あるいは購入した土地を所有している農家です。この後述べるシェア・クロッパーやケア・テイカーにカカオの栽培は任せて、土地持ち農家自身は都市で暮らしているというケースもあります。
土地を得られる可能性のある「シェア・クロッパー」
2つ目のシェア・クロッパーは、土地持ち農家から一定の期間でカカオ農園を借りて、カカオの収穫量、あるいは売上高を土地持ち農家と半分に分け合うという契約をしている農家さんです。
彼らはカカオ農園作りから始めるため、カカオの木が成熟するまでの5年間はカカオからの収入は少なくなりますが、5年目以降は収量が増加していき、10~12年目頃に最も収量が多くなります。それ以降の収量は減少していき、20年程でカカオの木は寿命を迎えますが、しっかり管理すればもっと長い期間収穫できることもあります。現在の農園の木が寿命を迎える前に次の世代の木を育てることも重要です。
また、シェア・クロッパーの最大の利点として、土地持ち農家にその管理方法などが高く評価されると、契約が完了した際に、これまで管理していた土地の半分(とその土地に生えているカカオの木)を所有する権利を分け与えられるチャンスを持ちます。
もっとも不安定な条件で働く「ケア・テイカー」
3つ目のケア・テイカーは、ここまでご紹介した中で最も不安定な条件で働きます。既にできあがったカカオ農園を管理して、カカオの収穫量、あるいは売上高の三分の一をもらうという契約の下で働く農家さんです(残りの三分の二は土地持ち農家さんの持ち分となります)。
契約期間は2~3年程ですが、カカオの木が成らないガーナ北部からの移住労働者がケア・テイカーになる場合が多いので、カカオの木の管理方法について十分な知識がなく、働きがよくないと、途中で契約を解除されてしまうこともあるようです。
土地の所有者になるチャンスがないケア・テイカーは、契約が切れると次の働き口を求めて他の地域やコミュニティに家族で移住することを繰り返すので、両親がケア・テイカーの子どもは転校を繰り返し、転校先の学校になじめない等の理由で学校に就学しない期間が発生してしまったりします。
特に北部からの移住者の場合、北部とカカオ生産地域の南部では宗教も民族も言葉(民族語)も異なるので、親も子どもも南部の生活になじむのには時間がかかります。ガーナ北部は気候がとても乾燥していて殆ど換金作物が育たないため、ケア・テイカーのような不安定な条件でも、働き口を求め南部へ移住してくる人たちが毎年一定数いると考えられます。
収入安定のための施策を実施しています
スマイル・ガーナ プロジェクトの支援地(2村)のうち一村では、村で農業用に使用できる土地が限られており、土地持ち農家がそれらの土地を手放すことはしないため、シェア・クロッパーは0人で、農家の約54%がケア・テイカーです。プロジェクトでは、このような不安定な条件の下で働く農家さんの収入を安定させるために、カカオの木の管理方法についての研修や、お米などの副収入源を作るための研修を実施しています。家庭の収入を安定させることは、子どもが継続的に学び続けられる環境作りの基盤になると考えています。
プロジェクトを推進するためにはみなさまからのご支援が不可欠です。引き続き応援いただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします!
ガーナ担当 赤堀 友希
ガーナの子どもたちを笑顔にするために
応援よろしくお願いします!
- カテゴリー:報告
- 投稿日:2022.03.24