【開催報告】ガーナの児童労働フリーゾーンに関する調査 報告セミナー
ACEは、2020年10月より、国際協力機構(JICA)の委託事業である「ガーナ共和国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査」を実施してきました。本調査では、児童労働に関する世界的動向やガーナにおける支援動向、カカオ産業の関係者等による取り組み動向を調査したほか、2020年3月にガーナ政府が発行した「児童労働フリーゾーン(CLFZ)構築のためのガイドライン」の実行可能性を検証するパイロット活動を、ガーナの2つの自治体(郡)で実施しました。本調査の実施にあたっては、開発援助分野でのコンサルティング事業を多数手がける、アイ・シー・ネット株式会社(IC Net)との共同事業体を組みました。
本調査の最終レポートの完成を踏まえ、2022年7月20日には調査結果に関する報告セミナーを実施しました。このセミナーは、JICAおよびJICAが事務局を務める「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム(以下、プラットフォーム)」が主催し、IC NetとACEが共催する形で行いました。セミナーには、プラットフォームのメンバー企業やNGO、開発援助コンサルタント会社やJICAの関係者を含む78名が、対面とオンラインで参加しました。調査の結果については、ガーナでのCLFZに関するパイロット活動についての内容と、カカオ・セクターにおける海外のプラットフォームの動向やガーナでのカカオに関連する企業やNGO等の動向に関する内容と、2つのパートに分けて報告を行いました。
ガーナ政府が国の制度として導入を進める「児童労働フリーゾーン(CLFZ)」
ガーナ政府が国の制度として導入を進める「児童労働フリーゾーン(CLFZ)」とは、児童労働の予防と解決のための仕組みが構築されている地域をさします。2020年に発行された「CLFZガイドライン」では、コミュニティレベルと自治体レベルで満たすべき8分野36項目の要件(指標)を定めており、児童労働に関する地域住民の理解促進や、児童労働のモニタリング実施体制、貧困家庭や子どもに対する福祉的・経済的な支援制度、適切な学校環境などを整備することが求められています。政府による評価(アセスメント)を受けて、これらの要件を一定程度満たしていることが検証された地域がCLFZとして認定される仕組みとなっています。
ACEは2018年11月から2020年3月にかけて、デロイトトーマツコンサルティング合同会社とともに、ガーナ雇用労働関係省と専門作業部会が進める、CLFZガイドラインの策定作業を支援してきました。今回の調査は、このCLFZガイドラインの策定を受け、CLFZ構築とガーナにおける児童労働撤廃への取組の効果的な実施を支援することを目的としています。
パイロット活動を実施し「CLFZガイドライン」の実行可能性を検証
ガーナの2つの対象郡で行ったCLFZのパイロット活動を通じて、児童労働をなくしていくために必要な要件がCLFZガイドラインによって標準化されていることの意義や、コミュニティレベルでの児童労働のモニタリングを実施することの有効性、コミュニティに対する自治体による支援や行政サービス普及の重要性などを検証することができました。貧困家庭や子どもへの支援については、すべてのケースにコミュニティレベルで対応することが難しいため、行政制度を充実させることが課題であることもわかりました。
さらには、パイロット活動の一部としてCLFZの評価(アセスメント)の試験実施を行った結果、当初ガイドラインで規定していたCLFZの地域区分や要件(指標)の見直しと改訂が必要であることが明らかになりました。ガーナ雇用労働省では、本調査の結果と提言を受けて、専門作業部会のメンバーとともに、ガイドラインの見直し作業をすでに進めているところです。
カカオ分野における多様な連携プラットフォームの動向
また今回の調査では、主にドイツ、スイス、オランダ、ベルギー等の欧州諸国を中心に進んでいる、カカオ分野における多様な関係者による連携プラットフォームの動きについても情報収集しました。その結果、日本におけるプラットフォームのあり方や活動の進め方に対するアイデアを得ることができました。これらプラットフォームを運営している関係者や、ガーナやコートジボワールで児童労働の撤廃に長年取り組む国際カカオイニシアチブ(ICI)や世界的な菓子企業のモンデリーズのほか、世界銀行やEUを含む国際機関や援助国の関係者とも直接の情報交換を進めることができ、ガーナ内外の重要な関係者のCLFZに対する理解を促進することもできました。
セミナーの質疑応答では、ガーナにおいて児童労働に関与しないカカオの調達を実現する上でのCLFZとの連携可能性に関する質問や意見などが、企業関係者から複数出され、期待と関心の高さがうかがえました。
今回の調査を受けてガーナ政府は、CLFZの構築と普及に向けた支援の継続を日本政府に要請し、日本政府はJICAを通じた支援の継続を決定しています。
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ACEとしては、他の企業と事業体を組んでJICAの事業を受託すること自体が、初めての大きなチャレンジでしたが(NGOがJICA事業を受託するのも稀)、国レベルでの取組の継続につなげることができ、とてもうれしく思っています。これも、これまでのACEの活動をご支援いただいた多くの方々のおかげと感謝しております。
ガーナ政府によるCLFZ構築の取組は、国際課題である児童労働の解決に対するひとつのモデルとなりうる可能性を秘めています。また、JICAのガーナにおける児童労働撤廃に向けた支援やサステイナブル・カカオプラット・フォームの取組は、日本政府のSDGsアクションプランにも位置づけられています。日本とガーナの政府間のパートナーシップが促進されることはもちろん、企業やNGO、国際機関など、あらゆる関係者が連携することによって児童労働の解決が大きく前進するよう、ACEは今後もこの動きを支えていきたいと思います。みなさんの引き続きのご支援、ご参加を、どうぞよろしくお願いいたします。
報告セミナーの動画をYouTubeで公開中
調査に関する報告セミナーの動画は、JICAのYouTubeチャンネルにて視聴することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
ガーナの児童労働に関する調査・パイロット活動 報告セミナー – YouTube
ファイナルレポート(PDF)閲覧はこちら
本調査によるファイナルレポートはJICA図書館ポータルサイトにて公開されています。日本語版と英語版があり、どなたでも無料でご参照いただけます。
JICA図書館ポータルサイト|「ガーナ共和国カカオ・セクターを中心とした児童労働に係る情報収集・確認調査ファイナル・レポート」(和文)
開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォームについて
ACEは、「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」のメンバー、児童労働分科会の運営メンバーとしても活動しています。みなさまのご参加をお待ちしています。
開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム | 事業・プロジェクト – JICA
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- カテゴリー:報告
- 投稿日:2022.08.24