日本の子ども支援
日本が批准している国連「子どもの権利条約」では、子どもに生存、発達、保護、参加などの権利があることを定めています。ACEは、日本にもある児童労働から子どもを守り、児童労働をなくすための活動を行うとともに、子どもの権利の普及と実現のための活動も行っています。
日本の児童労働
「日本に児童労働はあるの?」と思うかもしれませんが、日本にも児童労働はあります。
日本を含む先進国の児童労働者数は160万人とILO(国際労働機関)・ユニセフが推計しています。厚生労働省が発行している「労働基準監督年報」では児童労働にあたる法違反が毎年報告されています。また、児童労働の事例がメディア報道や文献などで見受けられます。
国際基準に基づいた日本での児童労働の定義
子どもを児童労働から守るために、ILO(国際労働機関)によって「最低年齢条約」(第138号条約)と「最悪の形態の児童労働条約」(第182号条約)が制定されています。日本はこの2つの条約を批准していて、労働基準法に反映されています。
就業最低年齢(15歳)未満の違法な労働
満15歳に達した日以降の最初の3月31日が終了するまでの子どもを使用することは、原則として禁止(労働基準法第56条 最低年齢)
※満13歳以上の子どもは、使用者が労働基準監督で許可をとり、軽易な労働であれば可能
※13歳未満の子どもは、軽易な労働も禁止。ただし、映画や演劇の子役などの仕事については、使用者が労働基準監督で許可をとれば可能
18歳未満の危険で有害な労働
国際条約で定められた危険で有害な労働には4つのカテゴリーがあります。
(1) 現代奴隷(人身取引、債務労働、強制労働、子ども兵士など)
(2) 買春やポルノに子どもを使用
(3) 犯罪など不正な活動に子どもを使用(特に薬物の生産や取り引き)
(4) 子どもの安全、健康、道徳を害し、心身の健全な成長を妨げる危険で有害な労働
(1)(2)(3)は、労働基準法の他に児童福祉法や児童買春・児童ポルノ禁止法なども適用されています。
(4)については各国で規定するようになっていて、日本では次の通りです。
18歳未満の子どもの安全、健康、道徳を害するおそれがある危険で有害な労働に使用することは禁止(労働基準法第62条 危険有害業務の就業制限)
※危険で有害な労働の例はこちら:年少者(18歳未満)に就業制限されている危険有害業務の例
児童労働と考えられる労働
・18歳未満の就労可能な子どもが、労働基準法などの法律違反の労働をさせられている。
例えば、午後10時から午前5時までの労働に使用することは原則として禁止(労働基準法第61条 深夜業)
・児童労働の定義を拡大すると、週に21時間以上の家事や家業の手伝いは就学に影響を及ぼすことから児童労働と考えられるとILO(国際労働機関)は解釈しています。
例えば、ヤングケアラーが学校に通えないなど
ACE 日本の児童労働への取り組み
1.児童労働の実態調査
日本における児童労働の形態、規模、特徴、要因などを調査しています。調査結果を発信して、多くの人に児童労働問題を知ってもらうとともに、問題解決に向けたACEの活動を計画するために活かします。
報告書
日本の児童労働についてまとめた報告書『日本にも存在する児童労働~その形態と事例~』(2019年)(日本語)および“Child Labour Exists in Japan: Its Forms and Cases” (2019)(英語)を発行しました。
こちらもご覧ください
活動報告「調査報告書『日本にも存在する児童労働』を発行しました」(2020年3月31日)
2.子どもを児童労働から守るための啓発活動
児童労働の観点から労働基準法などを説明した3種類のハンドブック・リーフレットを作成、配布しています。
「知ってる?働く人を守るルール」(中学生向け)
中学校卒業時に就職あるいは進路未決定の子どもたち、高校に進学してアルバイトをする子どもたちなどが、働き始める前に「働く人を守るルール」を知るためのハンドブックです。ACEで「みんなの声を聞く係」を担当している「キクよん」と一緒に読んでみましょう!
キクよんのツイッターでもハンドブックの内容を発信しています。フォローお願いします!
読んだ人の感想
「働く人を守るさまざまなルールを働く前の今の時期に知ることができてよかったです」(中学生)
「生徒の将来への準備として最高の資料でした」(中学校の先生)
「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」(高校生向け)
働いている子どもや働こうと考えている子どもが、「働く人を守るルール」について知って、危険で有害な労働、児童労働、ブラックバイトから自分の身を守るためのリーフレットです。チェックリストで「だいじょうぶ?」か、確認しましょう!
「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」ダウンロードはこちら
読んだ人の感想
「振り返ってみると、自分のバイト先はグレーゾーンかもしれないと気付けた」(高校生)
「分かりやすい資料で、質問に対する答えがしっかり書かれている」(高校の先生)
定時制高校で教員研修会を実施
定時制高校では、アルバイトや就職をしている生徒が多くいます。生徒から聞いた話から、「その仕事ってだいじょうぶなのかな?」と先生は思うことがあるそうです。
「あなたの職場で、年少者の労働環境が守れていますか?」(おとな向け)
年少者(18歳未満)にも労働基準法が適用され、さらに年少者の健康や福祉を守るために特別な規定があります。子どもを雇っている人、親、学校の先生などは、これらを理解して、児童労働を予防しましょう!
キクよんカード
「知ってる?働く人を守るルール」(中学生向け)と「あなたのアルバイトは、だいじょうぶ?」(高校生向け)がダウンロードできるQRコードと、キクよんのTwitterアカウントのQRコードが掲載された名刺大のカードです。
3.児童労働予防プロジェクト
中学校を卒業後、高校を中途退学後、高校など学校へ行きながら、働いている子どもたちを主な対象とし、学校や地域と連携しながら子どもを児童労働から守るためのプロジェクトを開始します。
活動報告
2023年3月22日
「沖縄うまんちゅ子どもの権利推進プロジェクト」が始動しました
ACEと沖縄青少年自立援助センターちゅらゆいは、デロイト トーマツ グループの一般財団法人デロイト トーマツ ウェルビーイング財団による第2回「コレクティブ・インパクトによる社会課題解決の推進」助成事業に、2団体の共同体として採択されました。今回の助成を受ける2022年12月からの活動は、「沖縄うまんちゅ子どもの権利推進プロジェクト」と名付けました。ACEとちゅらゆいの取り組みと、プロジェクトのキックオフの様子をご報告します。
2023年3月13日
「働く人を守るルール」に関する啓発資料についてお知らせするカードを作りました
卒業・入学のシーズンです。 中学校や高校を卒業して4月から就職、アルバイトを始める人たちに「働く人を守るルール」を知ってもらうためのカードを作りました。
2023年1月16日
子どもの権利条約フォーラムin那覇/沖縄で分科会を開催しました
子どもの権利条約フォーラム第30回記念大会が、2022年12月10~11日に那覇市で開催されました。ACEとちゅらゆいさんは、2日目に分科会「子どもの権利を守る居場所とは?」を共催し、2022年1月から開発している子どもの権利を基盤とした研修プログラムについて発表しました。
2022年11月10日
子どもを支援している方々への研修プログラムを開発中です
子どもたちに日々かかわっておられる方々に、子どもの権利についてより理解を深めてもらおうと研修プログラムを開発しています。2022年4月から10月までに計6回の研修会を開催し、15団体にヒアリングを行い、研修プログラムの概要を12月に開催される子どもの権利条約フォーラムin那覇/沖縄で発表します。
2022年6月30日
子どもを児童労働から守るための啓発活動を続けています
ACEは、子どもを児童労働から守るための啓発資料3種類(中学生用、高校生用、おとな用)作成し、配布しています。2021年4月から2022年5月15日まで、NPO法人アーユス仏教国際協ネットワークさんから助成金「2021年度『街の灯』支援事業(特別枠)~コロナ禍を乗り切るための支援~」をいただき、コロナ禍において子どもの権利を奪うような労働から子どもたちを守るために活動しました。