2021年4月30日
雇用主の育休問題
日本は世界に誇れる育児休業制度を持っている。育児休業給付金は給与の67%から50%を支払う制度だ。ただし、それは「雇われている」立場の人だけに限られていることをご存じだろうか。その理由は財源。雇用保険料から支払われるため、雇用主、個人事業主などには適用されない。男女かかわらずだ。
女性でNPOの代表理事を務める友人たちの中には、それを理由にいったん代表の座から退いた人もいる。私自身、育児休暇を取る際、頭をよぎったが、制度に合わせて代表を降りることに抵抗を感じて、踏みとどまった。女性三人が共同代表を務め、それぞれ出産・育児休暇を取っていた会社に聞いたら、育児休業が適用されない雇用主の女性には、会社負担で手当を出したという。
諸外国を見ると、フランス、オランダ、ノルウェー、スイスなどは個人事業主にも、国からの育児休業補償があるという。フィンランドは休業補償だけでなく、働いていなかった人にも手当がでる。
少子化、労働力不足という日本のダブルパンチ克服に向け「女性も輝いて」と言われたが、この育休問題が足かせだ。子どもを産んで、かつバリバリ働きたい意欲ある起業家の女性が子どもを持つこと、二人目を産むことを控えることにつながりかねない。日本の少子化対策にぜひ、考慮してほしい問題である。
NPO「ACE」代表 岩附 由香
(2021年4月27日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)