2016年8月12日
英国の現代奴隷法 Modern Slavery Act がスゴイ
先月、英国在住のCSRのスペシャリスト、下田屋さんが事務所まで来てくれ、事務局長の白木と3人でランチしながら情報交換をしました。
その際に話題になった、Modern Slavery Act 2015。企業のサプライチェーンに強制労働、人身取引、債務労働(借金のかたに働かせられる)などの”奴隷的”に働かせられている人がいないかどうかを、企業がチェックし、それを公表しなさい、というもの。
詳しくは、ぜひ以下の下田屋さんの解説を読んでください。
http://sustainablejapan.jp/2016/07/13/modern-slavery-act/22928
これがいいなと思ったのは「情報公開」を求める法律であることです。一定規模の英国の企業は2016年4月以降に開始する会計年度において、「奴隷と人身取引に関する声明」を公表しなくてはなりません。
つまり、自身のサプライチェーンにそのような奴隷的労働があるかどうかを確認したか、それをウェブサイトなどに公表することが求められています。
下田屋さんと話していて、この法律が素晴らしいなと思った点を、下田屋さんが上記記事に書いてくれているのですが、そこだけ引用すると
「また、もし奴隷と人身取引に関して、企業がその内容を確認するステップを踏んでいない場合には、その手立てをしていないことを声明に書かなければならないとしている。
この英国現代奴隷法は、企業が法令順守をしなかった場合には、無制限の罰金が科せられるとしているが、この法令の興味深いところは、実際にはその罰則により企業に取り組みをさせるという仕組みでないところである。ちなみに英国政府は、対象企業が「奴隷と人身取引に関する声明」に関して要求事項を満たしているかについては確認しないとしている。
この法令が求めている仕組みは、英国において市民社会、NGOのプレッシャーが強いことを利用して、企業に透明性を強要し、市民社会、NGO、大学の研究者などがWeb上の声明を精査するという市民社会の監視の目を使用するところである。
また、当該企業は他社の声明と比較することにより、それぞれの企業がお互いにどのように実施しているのか、何をする必要があるのかなどを相互に理解して、次のステップに活用させることができる。これらにより、各産業でこの問題を真剣に取り組みをさせることを考えている。」
いい意味で企業同士の競争を促すこと、そしてそれを市民社会がウォッチする、そこまでを想定して法律が出来ているって、スゴイです。実際的。
下田屋さんと話していて、こういう法律が日本でも出来たらいいのに、そんな企てをしたくなった夏の日の午後でした。