2006年10月11日
チョコレートと児童労働-実態と取り組み
チョコレートというと、みなさんは何を思い浮かべますか?
駄菓子屋にある1粒20円のものからデパート等で売っている1粒数百円のものまで、チョコといっても幅広い種類がありますが、それらに共通しているのが、その原材料、カカオです。
チョコレートの由来とカカオの生産地
実は、カカオは2000年の歴史を持つ食べ物で、正式名はラテン語で「神々の食物」という意味。通貨として使われていた(うさぎ1匹=10ココアなど)こともある貴重なものでした。カカオの木は、赤道から南北20度以内の地域でしか育たないのですが、16世紀にスペインに持ち込まれ、王族の飲み物としてヨーロッパに流通した後、1828年にオランダでココアパウダーが開発されると、1875年にはスイスでミルクチョコレートが登場。こうして庶民に親しまれる製品としてチョコレートは600億ドルの世界市場を持つようになりました。そしてその裏にあるカカオ農園での過酷な児童労働も、注目を集めるようになったのです。
現在カカオ豆を生産している主要国のうち4カ国が西アフリカ(カメルーン、ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア)に集中していて、ここでの生産は世界の生産高の約7割を占めます。中でも世界の43%の生産量をかかえ、国民の3分の1がカカオかコーヒー栽培に関わっているという国が、コートジボワールです。
カカオ農園で人身売買で売られてきた子どもたちも
IITA(国際熱帯農業研究所)が実施した西アフリカのカカオ生産における児童労働調査の調査(2002年発表、世界カカオ基金、米国国際開発庁及び労働省、ILO、各国政府の協力の下実施)では、コートジボワールだけで約13万人の子どもが農園での労働に従事しています。カカオ農園は小規模な家族経営である場合が多く、子どもが家族の手伝いとして働いている場合もありますが、12千人の子どもが農園経営者の親戚ではない子どもだったそうです。また、農園経営をする家庭の子ども(6歳-17歳)の3分の1は、一度も学校に行ったことがありません。
その中には「何らかの仲介機関」によってこの職についている子どももいて、他国から誘拐され奴隷として売られて強制的に働かされている、という報道や他の文献の指摘を裏付けています。
この調査では西アフリカでカカオ農園で働く子どもの64%が14歳以下と述べていて、カカオ栽培の労働集約的な作業、特に農薬の塗布、刃物の使用などは子どもの身体に危険をもたらす可能性が高いといえます。
カカオ産業の反応
このような児童労働が世間の注目を集めるようになった背景には、2000年、2001年の欧米でのテレビ報道と、NGOや消費者団体のキャンペーンがあったようです。産業側の対応としては、2001年9月に米国の議員とチョコレート製造業者協会がカカオ農園から最悪の児童労働をなくす目的で「ハーキン・エンゲル議定書」を締結しました。それを受けて2002年には国際ココアイニシアティブが発足し、以後、米国政府、ILO、労働組合、NGO、消費者団体等とともに実態調査、児童労働予防プロジェクトの開発、実施等を行ってきました。議定書に定められた行動計画の7項目のうち最後の項目が目標であった2005年までに間に合わなかったため、この議定書は延長されています。2006年10月のアメリカ労働省のプレスリリースによると、アメリカのティユーレーン大学のペイソンセンターが、議定書に定められまだ実現していない「カカオ豆生産量の50%に児童労働が使われていないことを認証できるようにする」という最後の項目実施を監督することになっています。
フェアトレードのチョコレートも最近見かけるようになりましたが、アメリカのチョコレート市場ではフェアトレードのものは市場占有率が1%にも満たないそうです。児童労働のないチョコレートの実現には、それぞれの取り組みがまだしばらく続いていかなくてはならないようです。