児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

東京新聞夕刊コラム「紙つぶて」

2021年2月2日

ニ―バーの祈り

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「ニーバーの祈り」と呼ばれるフレーズをご存じだろうか。「神よ、変えられないものを受け入れる心の静けさ、変えられるものを変える勇気、そして、その二つを見分ける英知を与えよ」。真理だと思う。そして、この「見分け」が難しい。

今年初めからオーストラリアの国歌が一部変わった。元の「私たちは若く、自由だ」という歌詞は、先住民のルーツを持つ国民から「入植前から続く六万五千年もの歴史を無視している」と受け取られていた。著名な歌手で、先住民ヨルタヨルタ族出身のデボラ・チータムさんが、それを理由にサッカーリーグ決勝での国歌斉唱の依頼を断ったこともある。この歌詞を「私たちは一つで、自由だ」と変えた。これを発表したモリソン首相は「先住民に敬意を払い、真実を国歌に反映させるのは当然。今こそ『団結の精神』を」という。

国民の声を聴き、国歌の一部を変える。同じことが日本で起こり得るだろうか。難しいだろうなと、つい思ってしまう。いや、もしかしたら私たちは「変えられないもの」を実際より重く考え、「仕方ない」「どうせ無理」と早々に諦めて、考えることを放棄しているのではないか。

もしそうなら「本当に変えられないのかな」と自問する習慣を身につけた方がいいのかもしれない。他人は変えられなくても、自分の思考は変えられるのだから。

NPO「ACE」代表 岩附由香

(2021年2月2日の東京新聞・中日新聞夕刊コラム「紙つぶて」に掲載)

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