児童労働のない未来へ-NPO 法人ACE代表 岩附由香のブログ(single-blog)

児童労働

2008年3月2日

なぜ私たちカカオ農家はカカオの値段を決められないの?

2月は18日間をガーナ共和国で過ごしました。お恥ずかしながら初アフリカ、初ガーナです。

目的はカカオ生産地における児童労働の実態調査でした。現在、そのレポートを書いていますので、詳しい調査結果はそちらに譲るとして、エピソードをひとつ。

なぜ私たちは値段を決められないの?

とある家庭でインタビューをさせてもらいました。最後に「こちらからのたくさんの質問に答えていただきありがとう。今度はそちらから質問があったらぜひどうそ」とインタビューを受けてくれていたアイザックさんに伝えると、こんな質問が返ってきました。

「なぜ、私たち(カカオ農民)はカカオの値段を決められないのでしょうか?」

この質問に、私は言葉では言い表しがたい深い感慨を覚えました。

カカオ産業の成り立ちの中でも「価格が農民とはまったく関係のないところで決まっている」点についてアイザックさんは素朴な疑問という形で問題提起をしましたが、そこはこのカカオ取引の根本的・構造的側面のひとつであり、課題をズバリ言い当てているのです。

カカオの値段を農民が決められないのは、ガーナでは、COCOBOD(ココボード)という政府機関がガーナ国内の1バッグあたりの取引価格を一律で定めているからです。原則、ココボードが決めた価格以外で売り買いする方法がないのです。カカオの価格は、年に1回更新されます。

さらに、カカオはロンドンとニューヨークの国際市場で取引され、カカオの国際価格が決まってわけです。カカオの価格決定には、農民はまったく関与することはなく、トレーダーがコンピューターの画面を見て取引を進めているわけです。

ACEが産業単位で児童労働の問題に取り組んでいる理由

ACEは、「国際協力(現場の支援活動)」と「アドボカシー(政策提言活動)」の2つをセットに「産業単位」で児童労働の問題にアプローチしている理由はまさに、このような産業を形作る企業行動や、消費者へのアプローチを模索しているからです。

この新しいアプローチを「ACEらしさ」としてACEの強みにしていく覚悟は出来ていましたが、現地にそのようなニーズがあるのかどうか、ということについては確信がありませんでした。

「なぜ農民の私たちがカカオの価格を決められないのか?」と言ってくれたアイザックに、ACEが日本で取り組んでいる「One More Love キャンペーン」などを紹介すると、「ただ消費するだけでなく、こうしてガーナまでやってきて実態を調べようとしたあなた方は大変 thoughtful だ」とおっしゃってくださいました。私たちが企業へのアドボカシー活動も視野に入れていることを話すと「是非がんばってほしい」ともいわれました。

ガーナのカカオ生産地域に滞在中、アイザックさんの他にも、同じ質問を投げかけられました。素朴な疑問だけれど、あれだけ手をかけて作ったカカオ。そうだよなぁそう思うよなぁ、と共感します。

ACEがこれからやろうとしていることに、正当性を与えてもらった気がしました。

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